旅人は夜汽車に乗って
駅近くの食堂でパッタイとビールという昼ゴハン。
ビア・チャンの大瓶1本飲んだので、ちょっと良い気分。
昼酒はまわるなぁ。
14時過ぎ、マレーシア・バターワース行き国際列車はすでにホームに入線していた。
最初に書いたように、寝台車の切符はタイの旅行代理店を通して日本で買っていた。
バンコク1泊の予定で、この列車に乗りたかったので買いにいく時間もないのと、人気列車でもあるので当日の寝台車の切符確保は難しいとのことからであった。
長時間2等車の座席では、この歳では辛いし。
14時45分、定刻どおり列車は動き出した。
タイを南下して、バターワース到着予定は明日の13時、約22時間の旅。
出発前に購入したビア・チャンを飲みながら、流れていく風景を眺めていた。
市街地から、椰子の木と田圃の風景に変わる。
旅に出て列車に乗ると、普段の生活で電車に乗るのと時間の流れが変わる。
普段は10分、20分という単位で乗っている、長いといっても東京−京都の新幹線で2時間半ぐらいなもの。
ビア・チャンを飲みながら外を眺めていると、ゆっくりと時間が流れていく。
夕方近くになり、晩ゴハンと翌朝の朝ゴハンの注文を取りにきた、座席まで配達してくれる。
食堂車はついているけど何両も離れているし、新幹線のように味気ない弁当じゃないのでありがたい。
すっかり日も落ちて漆黒の闇の中を列車は走る。
時折ポツンと街灯が現れては消えていく。
小さな町のネオンが闇から浮かび上がる。
列車の揺れに合わせて飲んでいると良い気分で酔いがまわってきた。
寝台もセットしてくれたし、そろそろ寝ましょうか。
列車が駅に停まったりする振動などで、何度か目を覚ました。
規則正しい線路の音と揺れが列車に乗っていることを感じさせてくれる。
朝、まだ寝ぼけているところに朝ゴハンのパックが配られた。
そうこうするうちに国境のブダンバサールに到着。
タイの出国審査とマレーシアの入国。
駅の食堂でゴハンにおかずを何品かかけてもらって弁当にしてもらい列車に持ち込んだ。
停まっている間に寝台を解体して座席に戻してあった。
座席にもどり食べると「ウフッ」と言いたくなる美味しさだった。
私の座っているボックスの反対側の席で白の短パンとTシャツの細身の中年の白人が、ブダンバサールから延々と携帯電話で話をしている。
「うっとおしい奴やな!」と思っていると、彼も気になるのかカーテンで顔を隠して電話を続けている。
やっと電話が終わったと思ったら席を立ってどこかへ行ってしまった。
しばらくして戻ってきて私に聞いてきた。
「この列車はクアラ・ルンプールに行くのか?」
「いや、バターワースまでだ。」
なんだコイツ?
そしてまたどこかへ行ってしまった。
国境でも、私の後ろ並んでいたけどビニール袋に少しの荷物だけ入れて缶ジュースを2つ持って、1つは自分で飲みながら、もう1つは、おそらく関係の無い隣の女性に「飲む?」と言って渡して、その女性がビックリしていたのを思い出した。
そして戻ってきて、また私に聞いてきた。
「アロースターには何時に着く」
「あと1時間ぐらいだ。」(なんだこいつKLに行くんじゃないのか?)
それにしても落ち着きの無い奴だ。
席に座っていても携帯いじったり、また立ってどこかへ行ってみたりしている。
視点が定まってない・・・クスリでもやってるのか?
そしてまた聞いてきた。
「アロースターはまだか?」
おれは車掌じゃないんだよ。
えーかげん、トットといなくなってほしい。
やっとアロースター到着。
奴はビニール袋持って降りていった。
やっと落ち着いたよ。
にしても奴は何者なんだ?
13時50分。
列車ほぼ定刻にバターワースに到着。
22時間、よく乗ったよ。
対岸にはペナン島が見えている。
さてフェリーで渡りましょうか。
どれだけ変わったかな、ペナンの街は。
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