ゼノビアの都


チェックインした時ホテルの大将が、私を乗せてきたアリの車で「サンセットを見に行かないか?値段は400SP(約1,000円)」と言ってきた。
つまりオプショナルツアーである。
そういえば来る途中アリが車の中から山頂をさして「カテドラル、サンセット」と言っていたなぁ。
400SPが高いのか安いのかわからないが歩いていけるとこじゃないし面白そうだ。
「OKだ。」
「サンセットの後、ベドウィンのテントへ行くのはどうする?」
「う〜ん、そちらはパスだ。」
真っ暗になってからベドウィンのところへ行っても写真を撮るのもストロボ使うことになってしまうし。観光客向けとなるとチップなども渡さないといけないから、わざわざ寄る必要もない。
17時にホテルに戻るとアリが待っていてくれた。

10分ほどで山頂の城跡へ到着。
彼はここで待っているとのこと。

パルミラが見渡せる、これだけでも来て良かった。























城跡に入場して屋上に出ると360度のパノラマ。

う〜ん、これはすごいわ、いい眺め。




















遺跡の向こうにはナツメヤシの林が広がり、その向こうは砂漠。
遺跡は夕陽をうけて赤く輝いている。














イタリアから来たカップルが記念撮影をしている、私もたのまれてシャッターを切ってあげたら私と一緒に記念撮影をしてくれた。
続々と観光バスもやってくる。










































そして日没。





































タクシーに戻ると土産物売りの子供たちも一緒に待っていた。
アリは、この子たちも一緒に乗せていいかと聞いてきたので「良いよ。」というとタクシーに乗り込んできた。
まぁ、面白いじゃない。
山を降りると彼らを降ろしたが、ちゃんと一人一人小額だがお金を払っていた。
アリのポケットにはいるのだろうけど、なんかいいな。
さてホテルの食堂で晩ゴハン。
私、一人だけ。

大将に「ビール買ってきてかまわないか?」
「かまわない。」
「シリアのビール売っている店を教えてくれ。」
「通りに出て左に行ったらあるぞ。」
ということでシリア産ビールを飲みながらの晩ゴハン。
結局シリア産のビールが飲めたのはこの時だけだった。







さて再び遺跡に行きますか。
食器を下げに来た大将に「これから遺跡に行く。」と言うと「サソリに気をつけろ。」の一言。
お〜い。





































マグライトを持って遺跡へ。
列柱がライトアップされている。
サンダルなのでサソリが気になるが。

空を見上げた。
期待したほどの星の数ではない。
光の無い場所なので空一面の星空を期待したのだが、ちょっと残念。

遺跡の上に座り(サソリが怖い)、ライトアップした列柱を見ていた。

ゼノビア女王が歴史の表舞台に出てくるのは西暦258年と言われている。
知略と謀略でパルミラ王国の統治者となったゼノビアは「戦士なる美の女王(Warrior Queen)」と呼ばれ、当時最大の国家ローマに戦争をしかけ273年に降伏、パルミラは歴史上から姿を消すこととなる。
意外なことに、ゼノビアは捕虜の身分にもかかわらずローマで贅沢に暮らしたと言われている。

そのゼノビアの生涯を描いた小説「流沙伝説」(赤羽 堯・文藝春秋社1994年)は2段組600頁という労作である。
篠山紀信の写真集「シルクロード」(集英社)のパルミラの写真の美しさ。
この2冊の本の影響で「いつかはパルミラに行ってみたい。」と思い10数年、今、私はその場所にいる。

私のほかは誰もいない。

あれだけ暑かった遺跡も気温が下がりサラサラと砂の音そして遺跡の間を吹きぬける風の音が聞こえてくる。
しばらくその音を楽しんでいた。

街に戻りカフェのテラスでビールを飲んでいると、街中のすべての電気が落ちた。
停電。

遺跡の方角を見るとライトアップの灯も落ちて、月も雲に隠れているのか、その空間には漆黒の闇が広がっているばかりだった。



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