サラエボ旅行案内


先日、大阪の自宅に戻った時、昔買った本を探した。
「確か捨てていないはず・・・」
しばらく探すと一番奥から出てきた。
「サラエボ旅行案内」(FAMA著 1994年三修社)
A4版を縦半分にしたサイズである。
ガイドブックの体裁をとっているが、サラエボ内戦のルポルタージュである。死体の写真も使い、日本の出版社で制作していたら採用しない編集となっている。

取材期間は1992年4月~1993年4月で、ちょうどサラエボ包囲戦の時期であり、毎日のように人が死んでいた厳しい時期であった。
内容は「食事」「ホテル」「タバコ」「交通事情」「水の確保」などミシュランガイド風にガイドブックの項目をたて、文章も淡々とした描写であるがゆえ、戦争の悲惨さが伝わってくる。

「交通事情」の項では
街灯もなく(壊れているか、停電している)、信号もない(誰かが持ち去った)道路で、車を運転していることを想像してみてほしい。歩行者に注意が払われることもなく、車が最高速度で交差点そのた危険地区を走り抜けていくさまを。

どこかユーモラスだが、情景がありありと浮かんでくる。

でも、その中で人々はコンサートや展覧会を開き、新聞を発行し続けていたのである。
解説で池澤夏樹氏が「人間は極限状況に置かれたとき、正確に客観視し、それを吹き飛ばすユーモアが必要である」と記している。
よく、買ったものである。

前ページでも書いたが、当時、この内戦については日本では報道が少なかったため、見つけたとき、すぐ買ったのだろう。
20年ぶりに読み返してみて、今の時代だからこそ読むべき本であるが、この本はすでに絶版になり、Amazonの中古本のみで入手可能である。ただし5,000円以上のコレクターズ価格になっているのが残念である。


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