カタカリ・ダンス


カタカリ・ダンス。
ケララ伝統の宗教舞踊である。
顔の表情や指を動きを使ったパントマイムである。
妹尾河童氏の『河童があるいたインド』でも河童氏のイラストで詳しく紹介されていて、この地にいくことがあれば見てみたいと思っていたのである。
コーチンでも毎日何カ所で演じられている。
私はコーチン・カルチュラル・センターに行くことにした。
有名な伝統芸能だから劇場はわかりやすい場所にあるだろうと地図を見ていたが、どうも大通りから中の入り組んだ場所にあるようだ。
歩いて行くと迷子になりそうだ。
オート・リキシャに乗る時もドライバーも首を傾げていたが、ホテルマンが通り名を言うとすぐに走り出した。
20分ほどでコーチン・カルチュラル・センターに到着した。
これは徒歩で来ていたら絶対に迷子になっていた。













階段を上がり、チケット売場へ。
1人250ルピー、400円ほどである。
高いのか安いのかよくわからない料金である。
17時からメイクを、18時から舞踊というスケジュールである。
切符売り場のオヤジから、17時に間に合うようにくるようにと念を押された。
今は16時過ぎである。
ここで待っていてもしかたがないので、近くを歩き撮影していた。



























遮断機が下りて10分以上経つが、まだ列車はこない







みんな適当に渡っていく







15分後にやっと通過

17時前に劇場に戻ると、チケットを売ったオヤジが私を見つけると階段から駆け下りてきて「何をしているんだ。メイクが始まった!」と私の腕をつかみ階段を上がっていった。上のフロアにあがると、役者がメイクをしているところだった。















様々なメイクがある






私の他に観光客は誰もいない。
もしかして、今日の客は私1人?
なるほど、だからオヤジは時間通りに私が戻ってくるかどうかにやきもきしていたんだ。
撮影も自由である。














その時メイクをしている役者が私に話しかけてきた。
「どこから来た」
「日本」
とやりとりして、「仕事は」と聞いてきたので、いつものように「フォトグラファーだ」と答えると、「嘘をつけ」と言ってきた。
「どうして?」と尋ねると「写真家なら事前に連絡して撮影の段取りを決めるはずだ」。なるほど、そういうことだったのか。
「いや、今回は私は休暇で来ているので、あらかじめ撮影に行くと連絡はしていない」と答えたら納得したようである。















二人がかりで巻いていく












メイクが終わると、次は衣装である。
穀物などを詰めるビニール袋を腰回りに広がるように何重にも巻き付けていき、その上から衣装を着る。
最後に足首や腕、首回りに装飾品を身につけ完了である。
ここまで50分かかっている。





































どうりで、私が来るのを待っていたはずである。
私が来るからメイクを始めたのであって、来なければ本日の公演は中止であり、メイクをする必要もないのである。
その後、ステージに案内され開演を待っていた。













ステージは大きな動きを必要としないためか、それほど大きくない。
本来なら2人で掛け合いで演じるのだが、観客は私だけということもあり、1人だけである。
英語で型についての解説があり、「笑い」「怒り」「驚き」「喜び」などを顔の表情動きのみで表現していく。
当たり前と言っては当たり前だが、とても豊かな表情でそれだけで何を表しているのかよくわかる。

























その次は、身体の動きが入っている。
「蜂が飛ぶ様子」「恋人に甘える時」「戦う姿」など顔と身体の動きだけで何の動作かすぐわかる。
最後、数分の踊りで終わりとなった。















ステージの奥にはダンシング・シバが
























1時間の公演、さわりだけでも充分面白かったが、できればパントマイムの劇を見たかった。
観客が1人では無理だろう。
役者以外にも数人のスタッフがかかわっているにもかかわらず、本日の公演収入は私の払った入場料のみなのであるから。
劇場を出るときスタッフからチップを求められた。
当然でしょう、結局5USドル、講演代金よりも多い額のチップを置いて劇場を後にした。

さて、インド滞在も明日1日である。



コーチン~旅の終わり

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