自称フォトグラファー


1人で海外を旅していると、地元の人から「どこから来た?」「どこに住んでいる?」「仕事は?」という質問を受けることが頻繁にある。
「どこから来た?ジャパン、コリア、チャイナ?」
「ジャパン!」
「日本の何処に住んでいる?トーキョー、オーサカ?」
「オーサカ!」
「仕事は何をしている」
「フォトグラファー!」(嘘つき)
と答えている。
左肩にごついデジタル一眼を下げて、カメラバッグをたすきがけにして歩いてるため、フォトグラファーを答えるとほとんどの人が納得してくれる。。
撮らせてもらった写真をカメラの液晶モニターで見せるともう完璧。
以前、一度だけ、ほんとの仕事を話したことがあった。
その時、その仕事の説明、なぜ1人で旅行しているのか、なぜ家族と一緒じゃないのか、など事細かに聞かれ疲れてしまった。
それが面倒なので、フォトグラファーと答えるようにしている。
仕事もしくは休暇で撮影に来ているといえば、それ以上詮索されることはほとんどない。

さて、話はアレッピーのゲストハウスに戻る。
ゲストハウスのオーナーに呼び止められ何事かと思ったら「Mr.ogawa、貴方は何の仕事をしているのか?」と聞いてきた。
どうやら宿泊者名簿を見て私の名前を知っているようだ。
いつものように「フォトグラファー」と答えると、「やはりそうか、ちょっと話を聞かせてほしい。時間はありますか?」と言ってきた。
なんかまずかったかなと思いオーナーの部屋へ。
オーナーは私のNikon D300を見ながら、「日本のプロカメラマンはニコンやキヤノンを使っている人が多いが、ソニーは使わないのか?」と質問してきた。
こんなインドの田舎でなぜニコンとキヤノン、ソニーのカメラについて説明しなければならないのかと、頭を抱えたが、これも身から出た錆、しかたがない。

「ニコンとキヤノンは古くからの光学メーカーであり、両社とも長年プロカメラマンへのサポートを行っている。そのため多くのカメラマンが両社のカメラを使っている。
ソニーのカメラを使っているプロのカメラマンはほとんどいない。」
「でもソニーは有名企業じゃないか。それにテレビカメラは有名じゃないか」
(なんで、そんなこと知っているんだ???)
「ソニーのテレビカメラ事業は長年手がけているがが、スチールカメラ事業は、ミノルタというメーカーの技術を取得して参入してきたので近年のことである。」
「じゃあ、将来、ソニーのカメラを使うプロのカメラマンが出てくる可能性あるのか?」「いないことはないと思うが、ニコンやキヤノンへの信頼は飛びぬけているので難しいかと思う。私もニコンを使い続けるつもりだ。」
「なるほど。じゃあ、パナソニックはどうだ!」
(何なのだ、このオーナーは?)
結局、1時間近く日本のカメラ産業について説明するはめになってしまった。私の英語力では充分説明できたとは思えない。
ともかく疲れた。

写真を撮ることは、コミュニケーションのツールとしては良い手段であるが、一方、トラブルを招きやすいのも事実である。
過去には、某国で軍人を撮影して銃口を向けられたことや、公安に拘束されたこともあった。
もちろん、どの国でもVISAの申請、入国カードの職業では本来のOffice Workerと記入している。(当然)
自称「フォトグラファー」は、地元の人たちとのコミュニケーションを取る時だけに使用するのが良さそうである。



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