アナログな旅


10時00分ちょうどにドライバーが玄関に迎えに来た。
ドライバーの名前はチャンデル。



ドライバーのチャンデル氏

私の本日の目的は「列車の切符を買うこと」である。
インターネットで何でも予約できるこの時代、私も国内線のフライトや何泊分かのホテルなど日本で予約をしている。
実は、今日買おうとしている列車の切符もインターネットで買うことができたのだが、バックパッカー気質というか、旅のアナログな部分を残しておきたくて、わざわざ駅まで買いに行くことにしたのである。

それに駅界隈やメイン・バザールで写真を撮りたいし。
日本車の後部座席に乗りこむと、デリーの詳細な地図が置いてある。K君が置いてくれたものである。K君の家、ニュー・デリー駅などが記載されてるページには付箋が貼ってあり、赤丸で囲んである。
どうもありがとう。

「何処に行かれますか?」と丁寧な英語で聞いてくるので、「えーと、インド門に行って、コンノートプレイス、ニュー・デリー駅に行ってください。」と答えた。
インド門とコンノート・プレイスはニュー・デリー駅に行く途中にあるので、とっさに言っただけである。
「インド門は中に入りますか?それとも通過しますか?コンノート・プレイスは大きな工事をしているので中に入れませんので周回道路を走るだけでも良いですか?」
バカ丁寧なインド英語で、そのうえ最後に「サー」と呼ぶので、変に緊張して丁寧な受け答えになってしまう。
「インド門は入ってください。コンノート・プレイスは周回道路を走るだけで良いです。」

市内に出ると交通事情は悪い。首都のデリー、それもニュー・デリーでこのひどさか。
道は譲らないし、車線という概念がないのか、いきなり対抗車が来たりして危なっかしい。
彼は無駄口をたたかず黙って運転している。
約30分でインド門。


















































インド門はニュー・デリーの官庁街に位置し第1次世界大戦で戦没したインド人の慰霊塔であると、到着して「地球の歩き方」を読んで初めて知った。
モニュメントとしては絵になる建造物である。
コンノート・プレイスは老朽化に伴う大規模な修理工事中である。
そこから約10分、ニュー・デリー駅に到着。

車を降りてチャンデル氏に「3時にこのSLの前に迎えに来てください。」と言うと、怪訝そうな顔をしたが「撮影をするんですね。わかりました3時にお迎えにあがります。」と返してきた。
インド門で私が撮影する姿を見ていたので気がついたのだろう。

ニュー・デリー駅。
この2階に外国人専用の切符売り場がある。

そこで切符を買うのだが、そこに行くまでに外国人旅行者と見ると旅行代理店の名前を騙って「2階は只今リノベーションしているので切符は売っていないので場所が変わった。」「貴方の乗りたい列車はすでに満席だが、ウチの旅行社なら切符も持っているので大丈夫。」などと言葉巧みに誘導し高額のツアーを買わされるなどトラブルが多発している。
「歩き方」にもその旨が記載されてある。


私も車を降りて切符売り場への階段を上がろうとしたら、「ミスター、何処へ行くんだい。」とわかりやすい英語で、身なりの良いビジネスマンが話しかけてくる。
やはり、来たな。
「列車の切符を買うためにオフィスに行くんだ。」
「外国人のためのチケット・オフィスは移動した。そこはクローズになっている。」
「じゃあ新しいチケット・オフィスはどこにあるんだ。」
「まだオープンしていない。私はDTTDC(デリー観光開発公団)の者だ。ウチのオフィスならチケットの手配ができる。」
この嘘つきが。
こちらも楽しくなってきた。
「歩き方」に載っている典型的な騙しの手口である。
ただオフィスまで行くとややこしくなるし、切符を買う目的があと回しになる。
「じゃあDTTDCの身分証見せてよ。」
「私を信じられないのですか?トモダチじゃないですか(ここだけ日本語)」
「当たり前だ、身分証を見せない奴を信じるわけないやろ。ボケ!(ここだけ日本語)さよなら」

そいつから離れて、階段を上ろうとしたら次の輩が「へい。ミスター。あいつは嘘つきだ、私なら切符を手配できる。」と私の肩に手をかけて日本語で声をかけてきた。
もう可笑しくて楽しくて、腕を払いのけて「おまえも同じやろ!」と言って階段を上がった。
面白いなぁ。

当然、外国人向けのチケット・オフィスは営業していた。
まずチケット購入用紙に必要事項を記入し、インフォメーションで列車の席の空き状況を確認してもらう、それを持ってカウンターに向かいチケットを買う、が手順だが、なかなか進まない。

夏休みのせいか日本人学生も多い、隣に並んだ学生は、「デリー-アグラ-ジャイプールを列車で移動して3泊5日なんです。」と話していた。
すごいスケジュールだ、出張じゃあるまいし。
1時間かかってデリー-アグラ間のタージ・エクスプレスのチケットを買うことができた。明日、デリー発6時30分アグラ着8時30分、帰りはアグラ







発20時30分デリー着22時30分。これで本日の目的は半分終了である。


慣らし運転

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