アンコール・サンライズ


早朝、4時40分。

アンコール・ホリデー・ホテルのロビー。
このホテルは、私が泊まっているホテルの斜め向かいなので徒歩1分である。
これからアンコール・ワットで朝日を鑑賞するツアーに行く。
がらんとしたホテルのロビー。

見渡すと「この人達が行くのかな?」という人が数名。
ツアーガイドのブッティーさんが、一人ひとりに声をかける。
ツアー参加者は5人。
私のような男一人が3人とカップル1組。
そしてツアーの説明。
「アンコール・ワットに入るには、1日券20$、3日券40$、7日券は60$です。皆さん入場券はお持ちですか。」
私は、当然初めてなので持っていない。
もともと買うつもりだったので問題なし。

その中で、一人の男性が大声を出した。
ドラマとかマンガに出てくるようなステロタイプの会社重役のように、腹を思いっきり突き出して偉そうに立っていた。
「そんな話は聞いていない。昨日、直接ツアー会社(スケッチトラベル)で申し込んだけど、朝日鑑賞ツアーに行くのに入場料が必要というアナウンスは一言も聞いていない。どうことだ。」
謙虚さのかけらも無い、私が一番嫌いなタイプのオヤジだが言っていることは筋が通っている。
私もネットで申し込んだ時、このツアーはアンコール遺跡群への入場料が必要か確認した上で、アンコール遺跡群のツアーと同一日になるように変更したぐらいである。

「さっさと会社に連絡しろ。」
ツアーガイドは電話をかけるが、どうも日本人スタッフには繋がらず、現地スタッフにしか繋がらない。
ツアーガイドの権限ではどうしようもないことをオヤジに伝える。
「日本人スタッフには連絡できないのか。」と怒鳴る。
そして、「俺は金を持ってきていない。そんな金を払えるか。何とかしろ。」
「何とかしろ」と言っても、ツアーガイドに権限があるわけではない。

その言いぐさを聞いた時、私はカチンときた。
「私はあんたのようなタイプは大嫌いだけど、あんたの言うことは100%正しい。しかし財布(金)を持って来なかったのは大間違い。たかが朝日鑑賞の2時間程度のツアーとはいえ何が起こるかわからない、いざとなったら金は必要だ。そんなことは常識やろ。」と、これ以上、怒鳴るようであったらツアーガイドに代わって言うつもりであった。

義侠心を出したわけでなく、こんなことで無意味な時間が過ぎて、私を含めて残り4人が日の出に間に合わないほうが問題である。
数分後、オヤジは捨て台詞を吐いてキャンセルした。
条件としてはホテルまで送れということ・・・当然の要求でしょう。
偉そうな態度は嫌いだけど、明らかに代理店のミスである。
通常、施設入場料はツアー代金に含まれていると考えるし、含まれていない場合はリーフレットやWebサイトに別途明記している。オヤジは店頭まで行って申し込んでいるのだから代理店はちゃんと説明すべきである。

オヤジをホテルに送り届けて、ともかくツアーはスタートした。
本日の日の出は6時頃の予定。
外を見ると、真っ暗な道をアンコール・ワットに向かう観光バス、トゥクトゥク、バイク・タクシーが数多く走っている。

途中、入場券販売所で一旦下車。
ブッティーさんが私たちを販売窓口に案内してくれる、早朝にも関わらず多くの観光客が並んでいる。







窓口で顔写真を撮られ、それが入場券に印刷される。
なるほど、これなら3日券を2日しか使わなかったので、残り1日分を誰かに譲渡することはできない。
私は予定通り1日券を購入。

この入場料というのは、アンコール・ワットやアンコール・トムなどそれぞれの入場料を支払うのではなく、その遺跡群に行くために入域料という意味である。
ミャンマーのバガンに行く時に払う入域料と同じである。













そして走ること10分程度。
アンコール・ワットに到着。
すでに多くの観光客が到着し場内に向かっている。
場内に入ると正面には3本の塔が、
写真などで見知った3本の塔が、ほんのり明るくなった空にシルエットが浮かび上がっている。













「とうとう来たなぁ。遠かったなぁ。」と自然に口に出てしまった。
「遠かった」というのは距離ではなく、時間の概念としての意味である。



















ブッティーさんは、陽が昇る位置は塔の右側と教えてくれた。
アンコール・ワットは正確に東西南北を向いた形で設計されているので、春分、秋分の日には、真ん中の一番高い塔から登ってくる。また、1月1日は、日本人が7割以上占める「初詣」状態になるそうだ。




















日の出の時刻になったが、雲が取れない、空をほんのり朱く染めて空は明るくなってしまった。
残念でした。







































土産物売りの少女も早朝出勤







こちらの少女も同様





6時半過ぎ、出発したホテルに戻り解散。
朝日に輝くアンコール・ワットを撮ることができなかったのは残念だが、こればかりは仕方がない。
もう一つ感じたことはシェムリアップからアンコール・ワットまでは数キロ足らず。
一ノ瀬泰造は、この数キロのために命を賭けたのである。
彼にとって、もどかしいほど遠い距離だったのだろう。
果たしてアンコール・ワットを撮ることができたのだろうか。
そして最後に彼の目には何が映ったのであろうか。








ホテル・アンコールに戻り、朝食を取り、次のアンコール遺跡ツアーまで1時間程あるので、朝の出勤風景を撮影に国道6号線へ。
赤土の舞う6号線。

































店の前を掃除する女性。この国の女性の髪はとても美しい












しばらく撮影したあと、裏道をブラリ。
あちらこちらでゲストハウスを建てている。まだまだ儲かると見込んでいるのだろうか。



























店番の少年

























ガソリン売りの少女





公園の一角にある観光案内所の前を通ると、日本語が。
お気持ち感謝いたします。



アンコール遺跡群ツアー 1

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