カンボディア


カンボディア、ベトナムと並んで私にとっては特別な想いのある国である。
その理由は10年以上前に書いた「悠久のメコンと喧噪のサイゴン」でも述べているが、ベトナム戦争、インドシナ紛争の当事国であったことである。

一枚の写真をきっかけに、高校、大学生の頃はベトナム戦争の写真集や記事ばかり読んでいた。
そのためカンボディア、ベトナム、ラオスの都市、街の位置関係は私の頭の中にインプットされていた。

この国の日本語表記はカンボジアが普通であるが、当時の記事などで英語読みを日本語に訳したカンボディアという表記がイメージに残っているので、この旅行記の表記はカンボディアで書くことにする。
ベトナムをヴェトナムと書く人がいるが、それと同じである。

もう一つは映画「キリング・フィールド」。1984年に制作された映画で、アメリカ人ジャーナリストとカンボディア人の助手の友情と、ポルポト政権下の行われた大虐殺を生き延びた実話を基にしたドキュメンタリータッチの映画である。
重い映画であるが、今まで私の見た映画の中で、最も印象に残り最も好きな映画でもある。

私にとってインドシナ紛争、内戦そしてポルポト政権下のカンボディアは、ベトナムと並んで私にとって最も関心の高い国であった。
1990年代の終わりからインドシナ紛争の当事国が鎖国政策から開放政策に転換し、一般観光客が入国ができるようになった。
私はベトナムには1999年2000年に行き、ラオスには2003年に行った。
だが、カンボディアは、好物を最後まで残しておくか、嫌いなものは最後まで食べないというか行く踏ん切りがつかず、東南アジア諸国はほとんど行っているにもかかわらず唯一と言っていいほど白地図のままであった。
普通に旅行者が気楽にアンコール遺跡群を見にカンボディアに行くのに、時代錯誤的は考えで踏ん切りがつかないというのは滑稽である。

年明け、GWのカレンダーを見ていたら1日休めば7日間旅行ができることがわかり、この時「カンボディアに行こう」と決めた。
私にしては珍しくGWの旅行を1月末に決め、航空券を手配を始めた。
ところがカレンダーが良いというのは共通であって、当初、関空-バンコク経由のチケットを狙っていたが、安いチケットは完売状態で高いチケットしか出てこない。
ホーチミン経由も同様であった。
結局、一番安く買えたのが羽田-シンガポール便であった。

これもシンガポールから先は、LCCのジェットスターでシンガポール-プノンペンしか手配できなった。
アンコール遺跡群のあるシェムリアップがメイン空港であるが、シンガポールも連休期間になるので、シンガポール-シェムリアップはノーマルチケットしか残っていない。
かろうじてプノンペン行きに安いチケットが残っていた。

プノンペンには行くが、移動効率を考えるとシェムリアップinのプノンペンoutのチケットにしたかったが無理ということもあり、羽田-シンガポール-プノンペン-シェムリアップという大回りなルートとなってしまった。
今回は現地の日本語ツアーを使うことにした。
その理由はアンコール遺跡の項で。

プノンペン-シェムリアップの航空券と現地日本語ツアーはスケッチトラベルにお願いした。

前置きが長くなったがいよいよ出発。
4月29日、GW初日、私は京都から新幹線で東京に向かっていた。EXカードのポイントが貯まったのでグリーン車にアップグレードしたところ、貸し切り状態であった。

今回の旅行では7回飛行機に乗ることになるが、すべてエコノミーなので新幹線ぐらいはゆったり乗って行きましょう。

東京で所用を済ませ22時、羽田空港着。







国際線は何度か見に来たが、使用するのは初めてである。












千住博の作品を見上げ、ターミナルに向かった。

ANA151便シンガポール行き、シートは20Hいつものように通路側。
23時30分定刻どおり離陸。
私の隣の20Jの席には、40歳前後であろう思われるやや背が低く、失礼だか茶色に染めた薄い髪で、靴下にサンダルというすでに東南アジアスタイルの男性が座った。
とても旅慣れていて、離陸後、飲み物はトマトジュースとビールを注文してレッドアイのカクテルにして呑み、スナックもデジカメで撮影し手際よく食べて寝てしまった。
4時過ぎに照明が明るくなり朝食が配られた。
海老フライなんて入っているよ、これは拷問だ。

定刻の5時55分より30分ほど早着のアナウンスが流れる。

シンガポールの入国カードが配られたので記入していると、隣の男性もガイドブックを見ながら入国カードの記入を始めた。
紀伊国屋書店のブックカバーをかけた「地球の歩き方 シンガポール編」であること表紙が見えなくてもわかる。
何気なく視点をずらしたら本の下部の小口部分に「京都市西京図書館」のスタンプが、その瞬間「ここにも公共の本を私用につかう馬鹿者がいるのか。」と軽蔑に変わった。

この話は以前に「図書館のガイドブック」という記事をblogに書いた。
ガイドブックという実用書は現地で折ったり書き込んだりして使うものだから、図書館の公共の本を現地に持って行ってはいけないという内容である。

ふだん旅行記では席位置や隣に座った人の風体や行動など具体的に書かないのだが、もし、万が一、私の隣に座ったオヤジが、この旅行記を読んだら自分のことを書かれていることがわかるように書いたのである。

「そう貴方です。ガイドブックぐらいたいした額ではないのだから自費で買うべきです。恥を知りなさい。」



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